■期待はしたものの...

 カラーポケットの発売予定が確認できたのは「次のザウルスは?(現:ザウルス噂の真相)」会議室における発言でした。

 8月14日時点でカラーポケットをカラー化したものという一文が発表され、そのフォローとしてフロントライト付きスーパーモバイル液晶、単3電池駆動、PHSやデジタル携帯電話アダプタ機能内蔵などが発言されています。

 その後、8月22日にJATEのモデム承認情報から型番がMI-310と判明し8月24日には詳細なスペックが発言されています。

 正式な報道発表は8月26日でした。


 正式発表前から、寄せられた情報を元にあれこれ解説を書き始めており、正式発表後はシャープのWebから画像等を引用して解説ページを正式公開しています。

 その後、9月4日の発売を待ったものの名古屋近辺では9月8日まで現物を見ることができず、その間はNIFTY SERVEのFPDAJやFZAURUSで実際に購入したユーザーの情報や「カラーポケット買う?買わない?」掲示板などの情報を見ながらカラーポケットの分析を進めてきました。

 その時点では期待半分、疑問半分という状況でした。


■購入に値すると評価する部分

 一般向け製品として世界初のフロントライト付きスーパーモバイル液晶(HR液晶)搭載という点では記念碑的な意味もあり、コレクション対象としては面白いものがあります。

 MI-610(TFTバックライト液晶)に比較すると見栄えに問題のあるHR液晶ですが、日常の利用で困ることはないでしょう。

 また、「買う?買わない掲示板」では「高い」と評価したものの、カラーで、デジタル携帯電話やPHSアダプタを内蔵している点を加味すると従来の機種との相対的には安い設定なのかもしれません。(従来機種のアダプタが「高すぎる!」のが本音ですが)

 ただし、カラポケのモバイル通信を最も快適に実現するのはNTTパーソナルの341Sをコンパクトフラッシュスロットに直結する方法なので、内蔵されているアダプタは不要とも言えます。(私がカラポケで通信するならこうします)

 小さい、軽量という点は私にはあまり関係なく(背広のポケットなどには入れない)購入へのプラスαにはなりません。(それより画面が大きくて見やすい方が良い)

 処理速度に関してはMI-610を使っているのでプラスポイントにはなりません。

 ハードウェア的な面白さがあるという点が購入に値すると評価する部分かな(^^?


■PIMとしての機能が後退した?

 9月8日になってようやく名古屋の販売店店頭にも製品が並ぶようになり、シャープ名古屋ショールームにも実機が入ったので第一段階のチェックをおこないました。

 この時は液晶画面の見え方やデザイン的なものや変更されたタッチキー周りの動作状況、アシスト機能などをチェックしたのですが、全般的な動作に馴染めないものを感じています。


◆基本インデックスの存在意義は?

 PI5000以降の機種では電源を入れたときにその直前に表示していた画面が表示されるような使い勝手の良さがありました。

 ところが、カラーポケットは電源を入れると「基本インデックス」が表示されます。

 また、インデックスメニューからアドレス帳やスケジュールを呼び出すと、その直前に開いていたページでは無く各機能の「先頭と思われる」ページから表示されます。(インデックスメニューを閉じると直前に開いていた画面が表示されます)

 ユーザーの使いやすさを重点として搭載された基本インデックスはPIMとしての使い勝手の良さをスポイルしていると判断しました。


◆ダイレクトキー廃止の代償は?

 初代パワーザウルス以降はタッチキー上の機能にタッチして電源を入れると即座にその画面が表示されるような仕組みになっています。

 また、他の機能を利用していても各機能のキーにタッチすれば即座にその機能が表示されるというメリットがあります。(カラポケもオリジナル、MOREキーにタッチして電源を入れればその画面が表示されます)

 当然、表示される画面はその直前に表示されていた画面となり、使い勝手は大変良いものでした。

 カラーポケットではダイレクトキーが廃止された弊害として機能間の移動に最低2ステップ(オリジナルにタッチ->各機能アイコンにタッチ)が必要となり使い勝手を悪くしています。

 過去のザウルスシリーズユーザーから要望の多かった「タッチキーへの機能の自由な割り当て」を期待しているのですが、カラーポケットは逆にキーを省略して使い勝手を落としています。


◆情報ファイルキーの廃止

 カラーポケット以外のMIシリーズはタッチキーの左側最上段に「情報ファイル」のキーが設定されています。

 左側タッチキーに割り当てられた機能は機種によって変わりますが、情報ファイルのキーだけは必ず左上にあり、その重要性はMIシリーズの要というべきものがあります。

 シャープ自身も情報ファイルをMIシリーズの「ウリ」にしてきたはずです。

 私の場合はインターネットオートサーフィン機能と組み合わせてニュース関連や運営している会議室ログなどを情報ファイルにまとめており、頻繁に見る機能だったので廃止されると前述のように必ずワンステップ余分な操作を強いられます。


◆各画面からアイコンが消えた

 カラーポケットではスケジュールやアドレス帳といった基本的な機能の画面から情報ファイルへの登録やメール添付のためのアイコンが消えています。

 こちらはメニューの中に含まれるのですが、ここでも操作ステップ数の増加に繋がっています。

 また、情報ファイルの使い方の一つに複数データの一括削除というものがあります。

->複数ファイルの一括削除方法

 ザウルスシリーズのデータ削除は1データまたは全データ削除しかなく、複数データをまとめて削除する方法はありませんが、情報ファイルに削除したいデータを登録して情報ファイル内のでーたとして全削除することで複数データの一括削除の代替とすることができます。

 この操作自体も結構面倒な手順を踏むのですが、各機能から情報ファイルアイコンが削除された事によりさらに余分なメニューからの選択という操作が加わります。

 カラーポケットは毎日利用する道具としてのザウルスの「使いやすさ」を犠牲にして、一時的ともいえる使い初めの段階での「使いやすさ」を優先したとしか考えられません。

 横道にそれますが、任意の複数ファイル一括削除のような基本的な機能こそ「使いやすさ」という意味では重要でしょう。


◆「使いやすさ」とは誰のためか?

 ザウルスユーザーの皆さんとネットミーティングしたりメールで情報交換しながら思い当たったのは、カラーポケットの「基本インデックス」はユーザーのためというよりはシャープさんのユーザーサポートのためではないか?という点です。

  私の場合、NIFTY SERVE FZAURUSでのQ&A会議室や、ザウルス関連Webを公開しているため見ず知らずのユーザーから質問メールをいただいたりします。

 その際の回答段階で機種ごとのメニュー構成の違いを確認したり、起点となる画面を想定しながら回答する必要があります。

 その点、カラーポケットでは必ず基本インデックスから始まります。

 ユーザーサポートとしては基本インデックスを起点として操作説明を行うことができればかなり手間を省くことができます。

 サポートコストの削減というメーカーから見た「使いやすさ」が重視されたのがカラーポケットの大胆なメニュー構成では無いかという疑問が日に日に深まります。


■カラーポケットはザウルスでは無いと考えれば...

 カラーポケットは「ザウルス」ではない。

 このように考えるとタッチキーの違いやメニュー構成の違いも納得できるのかもしれません。

 本来全く別系列のカラーPDAとして企画されたものが、営業サイドの要請で「ザウルス」ブランドを名乗らざるを得なかったのではないか?

 これはカラーポケットに見られる旧態の画面構成とメニュー構成を持つ表計算、ワープロ、データベースなどに関する機能的な不統一部分の不自然さからも考えられることです。

 他の機能と比較して全く異なるメニュー構成と操作感覚はかえってユーザーを混乱させると思うのに敢えてそのまま搭載しているようです。

 本来は、基本PIM機能とメール、インターネットアクセス、MOREソフト実行機能に絞り込んだ「新PDA」として企画されたものに「ザウルス」としての体裁を整えるために強引に割り込ませたという臭いを感じます。

 「コンパクトROM」に関してもPIシリーズや電子手帳時代のように表計算やデータベースなど万人が望まない機能はICカードで別売とすることを目的に採用されたのではないのか?

 カードによる機能拡張というPDAコンポーネントを目指したのが「カラーポケット」であり、ザウルスとは一線を画したかった思想なのかもしれません。(でも、MI-610も標準でコンパクトROM対応だから既定路線かな?)

 新しいPDAとしての「カラーポケット」であれば認めることができても、「ザウルスカラーポケット」と呼ぶには疑問を感じるのが現時点での私の本音かもしれません。

 もし、MI-610と同じようなダイレクトキーとメニュー構成のカラーポケットであれば迷わず購入したと思います。(それでも「まんまパワザウじゃ〜」とか批判することは間違いないのですが(^^; )


カラーポケット購入問題で考えたこと

■シャープはユーザーの使い方をどこまで知っているのか?

 長らくザウルスユーザーをしていますが、シャープが一般公募的に行った「ザウルスの利用方法に関するアンケート」に関しては数年前のNIFTY SERVE FZAURUS上で行ったものと、SHARP.CO.JPのWeb上で行ったもの(こちらは曖昧)しか見たことがありません。

 ここ1年で考えても公募的なアンケートは無かったと思います。

 ザウルスを購入するとユーザー登録ハガキにアンケートが付いているのですが、こちらは購入時点での状況であり、ユーザーが日常で実際にどのような使い方をしているのかの把握はできないはずです。

 もしかすると、登録ユーザーの中からランダムに抽出したユーザーに対してアンケートはしているのかもしれませんが、私の周りにはそのようなアンケートが来たユーザーはいません。->ご存じでしたらまるとまでメールで教えて下さい

 カラーポケットのダイレクトキーの省略や基本インデックスは「使いやすさ」のためとしても、各画面におけるアイコンの廃止やオリジナルメニューにMOREソフトを登録できなくなった、アクションリストがスケジュール画面で入力できなくなった、時刻をタイムバーから入力しにくくなった、という点はユーザーの利用動向をモニタしたが故の変更とは思えません。(いつの間にか無くなった「ローマ字かな変換」の削除理由も謎)

 オリジナルメニューに関しては「あなたのオリジナルメニュー教えて下さい」的なアンケートを取ればMOREソフトを登録しているユーザーがいかに多いかがわかるはずです。

 また、「あなたのザウルス1週間を教えて下さい」というテーマで、毎日ザウルスにどのようなデータをどのような手順で登録しているかを詳細調査すればダイレクトキーが操作にしめるウエイトや各種機能上にあるアイコンの利用頻度などもわかると思います。

 カラーポケットの場合、過去のザウルスとは一線を画したのだから、それなりのユーザーアンケートや実地調査を行ったと思うのですが、ザウルスユーザーから見ればこれまで積み上げてきた「使い勝手の良さ」のための工夫が全て無に帰していると判断せざるを得ません。

 ザウルス開発スタッフはザウルスユーザーの事(使い方)をどれだけ知っているのか? 一度お会いして聞いてみたいものです(^^;


1998/09/30に実際に会ってきました。

 「なんでカラーポケットはこうなのか?」という素朴かつ厳しい質問をぶつけた結果に得られたのが別ページに書いた『ザウルスおじさん』論になるわけです。

 ザウルスユーザーはリピータが多く、ユーザーの年齢層はどんどん上がっており、今後の老齢化問題は避けて通れない(^^; という危機感からこれまでとは違ったユーザー層にPRできるPDAを作ったのが「カラーポケット」だということがわかりました。

 本当は「ザウルス」を付けない方が良いのかもしれないという思いはシャープ(株)の皆さんにも若干あるようですが、「ザウルス」という名前の重さは避けて通れない所にザウルスユーザーから見た場合のカラーポケットの歯切れの悪さがあるようです。