■セルラーケーブルを使った見なし音声通信とは

モデムの入出力は電話回線の音声周波数帯域を利用しています。

接続時に「ピーひゃら」という音が聞こえますが、これがモデムの「信号音」です。

本来PHSはモデムの入出力が可能な構造になっていないのですが、専用のケーブル(セルラーケーブル)を利用してモデムの入出力をイヤホンマイクジャックを通すことでモデムの信号音を「音声とみなし」て通信することは可能です。

これを「見なし音声通信」と言います。

もともとアナログ携帯電話でパソコン通信やFAXを送受信する方法として発展した方法で、その名残が「セルラーケーブル」です。

注意)

この方法は主にPHSで使う方法でデジタル携帯電話で使えないと考えたほうが良いでしょう。

アナログ携帯電話なら2400bps以下で使える可能性はあります。


■見なし音声通信が成立する条件

見なし音声通信ではモデム入出力を「音声」として扱うため、音声として正しく再生されるための周波数帯域を必要とします。

通常の電話回線であればこの周波数帯域は十分に確保されており、モデムによる通信は何ら問題がないのですが、携帯電話の世界では周波数帯域の「圧縮」「復元」や「間引き」といった操作がされる場合があり、音声による会話であれば人間の高度な補完により会話として成り立つのですが、モデムによる送受信では補正が仕切れないため「通信エラー」として通信が途絶します。

この傾向はデジタル携帯電話で顕著となっており、実質的に見なし音声通信はできません。

アナログ携帯電話も周波数帯域が狭くなっており、高速モデムが要求する範囲が確保できないため2400bps程度が上限となります。

PHSの場合は14,400bpsまでのモデムが必要とする周波数帯域が確保できており見なし音声通信である程度実用的な通信ができるようになっています。(実用領域としては9600bps以下です)

ただし、こちらも「モデム設定」などでモデム利用をするための設定が必要になる場合があります。(主に自動ダイヤルのための設定ですが、音声とモデム音の帯域フィルタの特性を切り替える目的もあるようです)


ザウルスにおける見なし音声通信の歴史

PI5000の時代から見なし音声通信というのはあったのですが、一般に使われるようになったのはPHSの登場以降となります。

これはアナログ携帯電話で見なし音声通信を行う場合通信条件がシビアで、最強信号レベル下で2400bps程度といった制限が多かったためです。

PHSが登場してからはザウルス内蔵モデムの2400bps程度の通信なら楽勝で通信することができ、メール送受信やNIFTYのアクセスに利用されることとなりました。

ただし、この方法はシャープ非公認な方法で、この手の事が好きなユーザーが勝手に使っていました。

その後PI8000時代になってCE-PA1というPIAFSアダプタが発売されMI-10(カラーザウルス)でもPIAFS対応アップグレード(有償2500円)が行われ本格的なPIAFS通信時代が始まりました。

CE-PA1
PI-8000とCE-PA1とPIAFS 32K対応PHS

特にMI-10ではNTTパーソナルのDC-1S/P/Nカードがそのまま使えるという「裏技」が発見され(シャープ未公認)、CE-PA1を購入しなくても通信できるようになりました。

CE-PA1は値段が高いこととザウルス以外では利用できないため、補助的なメールの送受信程度でPIAFSを多用しないユーザーにとっては安価なセルラーケーブルによる見なし音声通信は現役の通信方法となっています。


■見なし音声通信に必要なもの

必要な物は「セルラーケーブル」で、インテグランCJ-750や平河ヒューテックのセルラーケーブルSuper などが有名どころです。(他にも数種類あります)

市価3〜4千円で購入できるはずです。(やたらに値段の高い物がありますが大して性能差はありません)

セルラーケーブルで接続 セルラーケーブルによるPHSとの接続

基本的には繋ぐだけです。

画像はPI8000ですが、パワーザウルス、ザウルスポケットでも同じように通信することができます。(ただしモデムの設定で通信速度を14400〜9600程度に下げて下さい)

セルラーケーブルの構造 セルラーケーブル

赤枠がザウルスのモデムジャックへ、緑枠がPHSのイヤホンマイクジャックに繋がります。

これはインテグランのCJ-750です。

PHSと接続 PHSのイヤホンマイクジャック

大抵のPHSにはイヤホンマイクジャックが付いています。

付いていない場合はあきらめましょう(^^;

なお、イヤホンマイクジャックの形状とセルラーケーブルのプラグ形状によっては相互に干渉して刺さらない場合もあります。

その場合はプラグ側を削るなどして対応しましょう(^^)v


■見なし音声のテクニック

1.接続タイミング

慣れてしまえば簡単な見なし音声通信も最初の頃は接続タイミングで悩むことになります。

最近のPHSは「モデム設定」によってモデムからオートダイヤルするための設定ができる機種が増えているので設定を行えば通信できてしまいますが、この機能が無い場合手動で電話番号を打ち込んで接続する必要があります。

この場合はザウルスの画面上に"ATD052-232-...."のようにモデムのダイヤルコマンドが表示されると同時にPHS側で電話番号を打ち込み(登録してあるなら呼び出す)接続します。

通常はこのタイミングで接続できるはずですが、PHS側の電話番号打ち込みにもたつきがあるとザウルス側で「通信エラー」表示が出るかもしれません。

2.ボリューム

ボリュームに関しては単純に大きい方が良いというわけではないので、最適な音量を体感的に掴むようにしてください。

3.PHS設定

PHSの設定項目に「モデム」がある場合(NTTパーソナルの311S、312S、314Sなどのように"S"が付くものなど)はその設定を有効にします。

「エコーサプレス」がある場合は使わない設定「いいえ、NO」にします。

接続中の画面 接続タイミング

設定の「スピーカー」は「入」にしておきます。

画面にATD052-232-...のようにダイヤルコマンドが表示されたらPHSで電話番号を入力して通話状態にします。

この後、モデムのネゴシエーション音(ピーひゃら)があり、ザウルス側は「接続中」になり、その後繋がるはずです。

■信号強度と通信速度

レベル1(アンテナ1本) 9600bpsで接続できますが途切れやすい傾向にあります。
レベル2 9600bpsで安定した通信ができます。
レベル3 最良の条件下なら14,400bpsで通信する事もできます。

 いずれも移動せずにその場で通信を行う場合で、歩きながら通信を行うとかなり高い割合で通信エラーになります。(ザウルス専用PIAFSアダプタCE-PA1を使った場合はレベル1でも圏外にならない限り通信状態は保持されます)


■注意点

接続先電話番号は内蔵モデムで接続する場合と同じ番号です。(ISDNやPIAFS対応接続番号ではありません)

ザウルス、セルラーケーブル、PHSの間に相性があり通信ができない場合があります。

これはどうしようもない問題なのですが、ザウルス側の通信速度を下げれば何とかなるでしょう(^^;

また、FAX送信はできたのですが、見なし音声通信によるFAX受信は上手くできません。(私の場合)


■繋がらない時は

・通常の電話回線で繋がるかチェック

まず、通常の電話線接続で接続できるかどうか確認して下さい。 

繋がらない場合はIDやパスワード、メールアカウント等に誤りがあります。

・接続状況の確認

接続時のモデム音を聞いて通常の電話線接続と同じような変化をするか確認して下さい。 

違う場合は通信速度を下げてみてください。(通常9600bps程度なら繋がるはずです)

モデム音が聞こえない場合はセルラーケーブルの接続が正しくできていない場合があります。