■それはここからはじまった

・ザウルスでダウンロードできないエキスパンドブック

1999/07/04になんでも会議室:使いこなし隊に「ザウルス単体でも本が読めました」という投稿がありました。

これは青空文庫のエキスパンドブック形式データがザウルス・アイクルーズでダウンロードできたとの報告だったのですが、当初機種名がはっきりしていなかったためアイクルーズ以外の機種を利用しているユーザーが続々と追試を行い、結果としてアイクルーズ以外ではダウンロードできなかったという状況になりました。

アイクルーズ以外のザウルスでエキスパンドブック形式データ(EBK形式)をダウンロードしようとすると「その操作はできません」とメッセージが表示され、ダウンロードできません。

実際のところ私自身ザウルス上で読むデータは青空文庫のデータではなく会議室/掲示板のログ、技術文書、ニュースデータをテキスト化したものばかりだったし、普段はパソコンでダウンロードしたものをザウルスに転送しているのでこの問題に関しては深く突っ込むことをせず、アイクルーズ以外じゃダメなことを確認するにとどまっています。

それ以前にharamasaさんがエキスパンドブックも読めるTTVブックリーダーを公開していなかったらエキスパンドブックをザウルスで直接読み込もうという人もいなかったに違いありません。


■ザウルスの特殊性

ザウルスでエキスパンドブックやテキストデータを直接取り込めない理由は、多分ザウルス内部に不要なファイルを作らないためだと思われます。

ザウルスの場合、ファイルシステムに制限が多く拡張子によっては一般的な方法では削除できないファイルとなったり、拡張子が小文字の場合の処理ができなかったりする場合があります。(これはザウルス内部/フラッシュメモリカードで状況が変わります)

そのため、予防措置的にザウルス側で知らないファイルに関してはダウンロードしない設定になっているようです。

ザウルスで標準的にダウロード可能なのはJPEGとGIFファイルに限定されます。


その一方で、シャープスペースタウンで公開されているデータなどを見ると、それらはMOREソフト配布形式である"ZAC"、ライブラリデータ用の"MPF"、クイックパスで各種データを提供するための"ZCV"といった様々な形式がダウンロード可能となっています。

しばらくの間、なぜこのような状況になるのかが分からなかったのですが、NT4.0+RAS+SIIというローカルサーバの実験環境が整って各種実験ができるようになってWebサーバのMIME TYPE(注)設定にザウルス専用設定ができれば何でもダウンロードできるということがわかりました。

パソコンの場合、MIME TYPEはファイルをダウンロードするか、ファイルを開く(ヘルパアプリケーションの起動)かの識別に使われているようで、たとえば拡張子TXTを持つテキストファイルを「開く」ならエディタが起動、拡張子EBKの場合エキスパンドブックリーダーがあれば「開く」と指定しておけばWebからデータをダウンロードした後に自動的にエキスパンドブックリーダーが起動します。

また、パソコン側がMIME TYPEを知らない場合は「開く」ことは出来ず(ユーザーが指定すれば開ける)、ファイルとして保存することになります。

ザウルスの場合は前述の通り自分の知らないMIME TYPEを無視してしまいますので、サーバ側でこれはこういったファイルですよと言うことを教えてあげるわけです。

サーバ側のMIME TYPE設定でどんなファイルでもザウルスに転送可能なことがわかり、エキスパンドブックのダイレクトダウンロードなども可能となったわけです。


(注)MIME TYEP  "x-application-zaurus-zac .zac" のようにその拡張子(この例ではZAC)がどのようなアプリケーションに関連付けられているかを現すファイルで通常Webサーバの管理者が設定します。 

プロバイダによってはパソコン等他の機器に影響が無い範囲でこの設定をしてくれることが多いのですが、たとえば"x-application-zaurus-ebk .ebk"のようにエキスパンドブックの拡張子をザウルス用に指定した場合にはパソコンで受信してエキスパンドブックを自動起動するという設定に影響を与えることがあるため、許可が得られます。

またプロバイダがユーザーに.htaccessの設置を許可している場合はユーザーがそれぞれの責任でザウルス用設定をすることができますが、こちらも多くのプロバイダではユーザーに設置許可をしていないようです。


■平行して進む各種研究

ざうまがWebの方ではundocumented ZAURUSというタイトルでザウルスに関するデータ構造や裏技などを研究しています。 その成果としていくつかの便利なツールをざうまがTOOLSとして公開しています。

->undocumented ZAURUS

->ざうまがTOOLS

・ザウルスでダウンロードできないデータをザウルスに転送する

前述のなんでも会議室に発言されたエキスパンドブック問題に関するコメントがその後は付かなくなったため気にもしませんでしたが、その後も他の話題としてザウルスしか持っていないユーザーが色々なデータ取り込みに難儀しているのを横目で見て、ざうまがTOOLSとしてMOREソフトダウンローダーを乗っ取って各種ファイルを転送する「乗っ取り君」、メールでデータが転送できる「何でもザッ君」などをリリースしています。

・cgiを使ってザウルスをだます

もう一つ、長年ザウルスのMOREソフトを配信する方法を研究していたのですが、その方法の一つにcgi(コモンゲートインタフェース:サーバ上で実行されるプログラム)を使ったものがあります。

これを使えばMOREソフト配布形式であるZACファイルをWebからザウルスに直接ダウンロードすることができます。

この方法でエキスパンドブックのEBKやテキストデータのTXTもザウルスでダウンロードできるようになります。

弱点としてはcgiを使うとWebサーバ側の負荷が上がるため、サーバ提供者が嫌がるということでしょうか(^^;

・NT4.0ローカルサーバ

自作HPをザウルスで見た場合どうなるかをチェックするためにいちいちインターネット接続していては手間がかかります。 また、Webサーバに対して変更を加えた場合(MIME TYPEなど)、ザウルスはどうなるかを確認するためにもWebへの接続は必要となります。


■青空文庫さんへの依頼するも、実現ならず(99/10/23)

ザウルスでエキスパンドブックをダウンロードできるようにするための設定に関しては前述の通り、Webサーバ側にザウルス用MIME TYPE設定をしてもらえば可能となります。

そこで、青空文庫の運営ご担当者にメールをしてみたところ、実現の可能性について見当していただくことができました。

その結果としてはザウルス用の設定をした場合にはパソコンなどのヘルパアプリケーションの動作に影響を与えるとのことで、青空文庫側での設定はできないという結論になりました。

そこで、私が中心となってザウルス用書籍データ配信Webの構築に着手することになったのです。


■何から始めれば良いか(99/10/23)

自前で図書館を作るとなると、考えなければならないことが多々あります。

私はこれまで趣味と仕事でいくつかのWebや会議室、掲示板などを立ち上げてきており、Webを作る作業そのものには何の問題点も感じません。 また、メールマガジンなどの情報配信の実績もあります。

モバイル図書館の立ち上げに関しても、Web構築部分や広報用メールマガジンの配信などに関してもこの先問題が出ないと思います。

一番の問題点になりそうな点が、長期間にわたるWebと書籍データの配布能力の維持の実現です。 

過去に作ったWebでも、URL変更を度々行うため利用者が探し回らなければならないという問題を生じています。 

こちらに関しては将来的にはホスティングサービスを利用して専用化したサーバと高速回線への接続を実現する予定ですが、とにかく一度は立ち上げてどのような問題が生じるのかを確かめなければなりません。 

専用サーバ等を実現するには何よりも費用がかかりますが、現時点でその当てはありません(^^; 無料Webサーバが大活躍するわけです。

また、青空文庫の書籍データは毎日のように追加されるため、それと同期しながらの維持管理に要する労力の確保をどうするかなども長期的な観点から考えていかなければならないでしょう。

これらに関して考えると、個人レベルでの運営は不可能とも思われ(^^; 運営チームを編成して各自の持てる能力を提供するという体制にしていく必要があるでしょう。

実際には「やるぞ〜!」と公言して自分の尻を叩きながら各種問題をクリアするという日々が続くわけです。


■Web名の紆余曲折(99/10/25)

当初Web名はザウルス図書館とかザウルスブックセンターのように「ザウルス」を含めた名前にしようと思っていました。

しかし、ザウルス用にはシャープスペースタウン上に「ザウルス文庫」という有料書籍販売ページ(光文社電子文庫のザウルス版)が存在します。

また、「ザウルス」は多分シャープ株式会社の登録商標であると思われ、これを冠することには問題がありそうです。

企画を練り上げるうちに、ザウルスだけでなくコミュニケーションパルやブラウザボードといったザウルス系PDAや今後も各社から発売されるメール端末などからの利用も考慮すると「ザウルス」で縛ってしまうのには問題がありそうです。

そこで、モバイル機器で汎用的に利用可能な書籍データ配信Webということで「モバイル図書館(もばりぶ)」にしました。


■建設を宣言(99/10/27)

私が手がけているザウルス系メールマガジン「ざうまが」ではザウルスとエキスパンドブックに関しての諸問題についての記事を度々掲載しています。

また、現在シャープスペースタウン(SST)で公開されているザウルス文庫に対しての苦言も呈したことが多々あります。 これは、有償の書籍データ配信も結構ですが、広くザウルスユーザーのことを考えるなら青空文庫のような無料で利用できる書籍データも公開するか、リンクしたらどうでしょう? というものです。

無料の書籍データによりザウルスで本を読むことの面白さがわかれば有料で販売されている書籍データも購入してもらえる機会が増えると思うのですが、SSTはザウルスに関する「文化」を育成することなく金銭的な成果だけを求めているような気がしてなりません。

SSTはザウルスユーザーのために存在するWebではなくて、ザウルスユーザー向けに商売をするWebであるともいえます。

その対極となるべくモバイル図書館は構想され、実現に向けて動き出しているわけです。 

基本理念はザウルスユーザーに優しいWebです。

また、ザウルスユーザーが困ったことは他のPDAやメール端末ユーザーにも同じような問題として立ちふさがるであろういことも考え、将来的な対応を想定しながらWeb構築を進めることにしました。

こういったことをざうまがの記事として配信し、モバイル図書館の建設開始を宣言したわけです。

モバイル図書館に関しての私およびざうまがの立場は青空文庫における工作員と同じようなものと考えて作業を進めることとします。


■用地確保(99/10/28)

図書館建設を始めるとして、真っ先に必要なのが用地であるWebサーバのエリアです。 青空文庫のデータを眺めているとトータルで90MB必要なことがわかり、ザウルス用に加工するとそれより2割ぐらいは大きくなりそうです。 更に毎日のように増えつづける青空文庫側とシンクロするためには1年先を見越して200MB程度は必要となりそうです。

200MBものエリアを気前良く提供してくれるプロバイダなどは存在しません。 海外に目を向けると容量無制限のXOOMという無料Webエリア提供サービスがあるのですが、こちらはフレームを使うためザウルスでアクセスする場合に利用しづらい(ザウルスのフレーム対応が中途半端なため)という問題があります。 国内の無料Web提供でも20MBが上限でしょう。

こういう事情を考えると本格的に書籍データを配信するなら専用Webとしてホスティングサービスを利用したくなるのですが、コスト的に考えると1万円/月程度の費用が発生することになります。

インターネットのアクセスライン費用に関してはテレホーダイや固定制プロバイダの利用で節約できるし将来的には地元のCATVが提供するネットワークに接続するという目論見もあるので、漸減傾向になると思われるのですが、Webサーバについては自前で用意するよりはバックアップ体制が整っているホスティングサービスの利用がどうしても必要となります。

とは言え、あれこれ考えてばかりいてもはじまらないので、日頃使っていて使い勝手も分かっているFreeWeb上にエリアを確保することにしました。 

ただし、このWebサーバではMIME TYPEの自由な設定が出来ないため、ザウルス用データの送出にはcgi(プログラム)を使う必要があります。 この方法はサーバに負荷をかけやすいため余り利用が推奨されていないので、将来的には追い出される可能性もあります(^^; これが無料Webの現実でもあるのです。

ユーザーネームとして"mob-lib"を設定し、めでたくモバイル図書館用地を確保することができました。

URLは http://www5.freeweb.ne.jp/novel/mob-lib/ です。

当面はユーザーからのリクエストに応じて書籍データを追加、平行しながらあいうえお順にデータを追加をすることで容量との兼ね合いをとりたいと考えています。


補足:

世の中には奇特なプロバイダやサービス提供会社があるもので、社会に貢献するプログラマに無料でHPエリアを提供するという太っ腹な企画を行っているところがあります。

早速その企画に応募して無料かつ容量無制限というもばりぶにとって極楽な環境を入手することができました。

現在のURLは http://free01.plala.or.jp/~mobile/lib/ になっています。


■ファーストリリースへ向けて(99/10/30)

モバイル図書館の最初のお披露目は99/11/01としました。

年内はこの仮設Web上で運営し、書籍データの並べ方やデータ送り出しプログラムの改良などを進めていく予定です。

課題としてはザウルス系PDA向けの図書目録の作成(MPF形式)があります。 こちらはWeb作成と平行した作業を進めているところです。

Webロゴに関してはザウルスで見る場合を考えると文字にした方が良いとは分かっているのですが、こういうのを作るのが好きなので作ってしまいました。 初期のシャープスペースタウンにおける意味無し画像は邪魔とか言っていた割には自分で作るWebではロゴとは言え、画像を載せるのはなんだな〜と思いつつ(^^; です。

もばりぶロゴ

それ以外はザウルスの画面で見て見やすいことを最優先にしています。 それゆえパソコンで見るとちょっと寂しげな構成となっています(^^)/

ロゴのイメージは青空にかかる虹で、青空文庫の姿勢を受け継ぎながらパソコン以外のモバイル機器に対する橋渡し的サポート実現をイメージしています。


■目標は1日1文字(99/10/30)

図書館建設を開始したとはいえ、書庫はまだ空っぽの状態です(^^;

ザウルス系のPADで扱いやすいページ構成やダウンロード方法などの試行錯誤が続くため急速な補充は無理としても、1日に50音の1文字分は登録&公開できるように準備をすすめたいと考えています。


■難航する入庫作業(99/10/31)

明日の仮オープンに向けて「あ」の頭文字を持つ作者と作品の登録を開始したのですが、ザウルスでダウンロードするとEBKやTXTになりません(T_T)

ファイルの送り出しはCGIを使っているのですが、実験サーバでのテストではOKだったのに何故なんだ〜(T_T) と泣きながら1時間以上に渡ってパソコンでアップロード/ザウルスダウンロードの繰り返しです。

結局分かったのは相対パス指定(注1)で文庫を指定してもダメだということで、絶対パス指定(注2)にしなければならないという点と、CGIと書籍データが同一ディレクトリ上に存在しないと正常に送り出せないというものでした。

多分CGIを改良してURL指定でも受け付ける仕様にすればよいのですが、本番用WebではCGIなど使わずにMIME TYPEだけで済ませることができるので、CGIに構っている暇はありません。

そこで、場当たり的にCGIを全書籍データディレクトリに配置すると言う方法で切り抜けました。

でも、この方法だとメンテナンス性が劇悪なので今後のことを考えると難儀だな〜(^^;

・書籍展開も大変

青空文庫で配布されているテキストデータはZIP形式なのですが、ザウルスでこれをダウンロードしてもharamasaさんが作って公開しているZGZを使わないと展開することができません。 ZGZもまだ改良が進んでいるため、現時点でZIP形式による配布は止めておいたほうが無難かな?と考え、ZIPを一旦展開してTXT形式データとして配布することにしました。

この作業が結構大変(^^; 青空文庫のデータはASCIIの雑誌付録CD-ROMがあるため、インターネットに接続することなく利用できるのですが、それでも一旦ブラウザで表示→ファイルとして保存→展開→Webエディタにコピーという作業と、そのファイルをダウンロードできるようにするためのCGIとの割付作業などが入ります。

平均すると1作品あたり10分から15分かかります。

う〜、恐ろしい(^^; 全部で500作品以上あるはずなので5000分(80時間)以上かかるのか〜(^^;
まあ、2000年までには全部できれば御の字なので、地道にやっていきましょう。 もしかするとWinodws のスクリプトでバッチすればもう少し楽になるかも? それよりもVisual Basicで専用ツールかな?

・ザウルス版目録の目処が立つ

ザウルス文庫の目玉はMPF形式ファイルによる書籍目録の一括取り込みなのですが、その目処が立ちました。 一旦Webからライブラリに取り込みそのデータをパソコンで読み込みしてから必要な部分をMPFデータとして取り出し、若干の加工をした上でMPFファイル化すればOKです。

仮本番前に目処が立ってよかった(^^)/


注1:相対パス指定 ../../ebk.cgi?../../zaumaga.ebk のように相対的な位置指定を行う方法
注2:接待パス指定 /cgi-bin/lib/eib.cgi?/mob-lib/books/zaumaga.ebkのようにディレクトリを先頭から完全に指定する方法


■説明書作り(99/10/31)

もばりぶの使い方を説明したページを作成せねばと急遽思いつき、作成する。

時間が無いけれど今後必ず必要になるし、他のページで宣伝するときにこのページをMPFファイルとしておくことを視野に入れて画像などをふんだんに入れたページとします。 でも200KBの壁はどうかな?(ザウルスのライブラリには1データあたり200KB程度の制限が存在します)

また、これらのページは非ザウルスユーザーにザウルスで読書するメリットなどが分かるようにしたいと考えています。

ただし、問題なのが画像サイズで、ザウルス等はWeb上の画像を1/4に縮小して表示するため、その画面上で見やすくすることを考えると4倍にする必要があるのですが、これをパソコンで見るとマヌケ(^^;な画面になってしまうということです。

まあ、当面はザウルス系専用Webだから良いか(^^)/


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