このページはざうまがFLASH 99/04/29号から抜粋したものを掲載しています。

船頭多くして 船、山を登る。アイクルーズをよってたかってダメにした?

 ざうまがではアイクルーズ登場前から噂などを掲載して、「これぞザウルス」という最高峰のザウルスに期待を寄せてきました。

 また、発表翌日には詳細な調査を行い「これぐらい凄いぜ!」と評価したこともありました。(最初の評価は主にハード面だったからな〜(^^;)

 でも、実際に購入して使い始めてみると「なんじゃこりゃ」というとまどいと、「だめだこりゃ」というあきらめの部分が増えてきます。

 良いことばかり書くのは他のメディアに任せるとして、今回は叩きます。

 こういうこともどんどん書かないと「ザウルス」の未来はないもんね(^^)/

 なお、私の中でアイクルーズは既にPIMとしての「ザウルス」という位置づけはしておらず「情報活用のためのツール」として各機能の評価を行っています。

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 言いたいことの大半は「アイクルーズご意見板」に発言された皆さんと同様なので、ここでは書きません。(細かく書くと長くなりすぎる(^^;) Web の方にあげておきますので読みたい人は読んでください。

・アイクルーズご意見板
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/1803/geobook.html 


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◆個別機能は高く評価できるかもしれない

 アイクルーズは「PIMとしてのザウルス」「インターネットを利用するためのザウルス」「スペースタウン端末としてのザウルス」「パソコンと連携するザウルス」「MYコンテンツを使うためのザウルス」「デジカメとしてのザウルス」などのように様々な方向性をもちます。

 それらを先入観無しに個々に評価していけばそれなりに高いポイントを与えることができるでしょう。

 ハードウェアだけ考えれば、画面枠のデザインは問題外としてスクロールボタンをはじめとしたハードウェアボタン、VGA 液晶、高速化されたCPU、標準で添付されているクレードルとPDAとしては強力な構成でしょう。

 PIMだけをピックアップすれば1ヶ月カレンダに4文字X3行の内容表示ができるようになったことでスケジュールの見通しが良くなりましたし、スケジュール表示における文字サイズが変更できるため大きくすれば見やすく、小さくすれば表示行数を増やすことができます。(ただし、アクションリストの入力は面倒)

 インターネット機能はVGA画面の賜として1画面で表示できる情報量も増えて見やすさが向上しています。 ライブラリ内での表示もページタイトルと縮小画面によりわかりやすさが向上しています。 なによりSSLやクッキーに対応したことで見られない/ 利用できないページが減りました。

 スペースタウン端末として見ればエキサイト番組表に仕込まれた「録画機能対応データ」により巡回予約が簡単にできます。 また、クイックパスが使えるようになったことで情報へのアクセスは簡単になりました。

 MYコンテンツは未完成とはいえ、将来的なオリジナルコンテンツの登場などが予感でき、機能拡張のためのプラットホームとしてきたいできそうです。

 デジカメ部分を見ればオートフォーカスと適度なカラーバランス、ドキュメントモードの搭載によるクリップとしての利用、メモリカード併用による大量の画像撮影XGAサイズまで撮影可能とデジカメとしての基本線はクリアしています。

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◆アイクルーズというシステムで見ると矛盾が多くなる

 しかし、これらが「ザウルスアイクルーズ」というシステムとなると途端に使い勝手が悪くなります。

 PIMとしてはメニューの片隅に追いやられるように重視されていないため、目的の機能にたどり着くまでのステップ数が増加していますし、MYコンテンツの一つとして表示されるのにそこから修正や削除ができないという操作の制限があり、「なぜできない?」とユーザーを悩ませます。

 一見インターネット機能とスペースタウン端末は同じ方向性に見えるのですが、クイックパスを使って取り込んだコンテンツを「見る」場合、ブラウザではなくMYコンテンツの一つとして見ることになるため、せっかくのスクロールボタンが効かず画面タッチのスクロールを強いられます。

 また、クイックパスと録画機能が連動できないため、結局手作業でデータの取り込みを行う必要があります。この部分に関しては「ぴあ」「リクナビ」は選択範囲が多いため自動化は難しいと思うのですが「Biz 」はニュース項目として固定されている部分があり、定期的な録画ができるなら利用価値が高まるはずです。

 MYコンテンツに関しては従来のパーソナルデータベースから機能向上がなされていることはわかるのですが、現状ではオリジナルのコンテンツを定義する術は無く、既存のコンテンツも削除したら復活できないという使う側にとっては判断に困る部分があります。 パソコンとの間でデータ交換する場合もMS-ACCESS頼みになり、ユーザーを悩ませます。

 また、MYコンテンツ内のコンテンツをメニューに登録できないめ、必ずMYコンテンツ->コンテンツ選択という動作が必要となります。

 MYコンテンツの根本的な欠陥として、コンテンツの並び順をユーザーの自由にできないというものがあります。 これはコンテンツが増えてくると致命的な問題となりかねない点でしょう。(機能 +右端の左右タブで一覧表示 /選択できるのはわかっているのですが、根本的な解決になりません)

 デジカメはハード的には良いのですが、撮影するためにメニューを開いてから機能を選択という余分な動作(パワザウならダイレクトキー一発)が入り速写性を落としています。 また、撮影後の「電子アルバム」はMYコンテンツの中にあるため、上記の理由でオリジナルメニュー画面から一発選択できません。 なぜかホームメニューからなら一発選択できますが、メニューの2画面目にあるため結局ワンタッチ余分な操作が必要となります。

 電子アルバムで最も困るのが本体メモリとカードメモリ間で画像のやりとりができないという点でしょう。 なんでこれができないようにしているのか理解に苦しむのですが、実際に運用する場合に必須とも言える機能が無いので使い勝手を損ねています。(PC-Exchange で1画像づつなどという方法があるのですが、これじゃ泣きたくなるぐらい時間がかかります)

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◆使う上での満足感を下げる点

 これ以外にもデザイン面を考えると「画面枠デザインのサイバーしすぎ感」と「メニューにおけるアイコンの意味のないシンプルさ」「電子アルバム(手書メモ)におけるスタンプのアホさ加減」「クレードルにセットするとペンが抜けない、メモリカードの抜き差しができないという配慮の無さ」「デジカメをセット
 するとACアダプタが差し込めない配慮の無さ」「LCフォントも文字サイズによってはギザギザの目立つものとなり醜い」など使っていく上での満足感を日々損ねていきます。

 使い勝手面で付け加えるならインターネットの接続などで「接続先」と「接続機器」を個々に設定するのですが、これは接続先に機器が従属する形で設定できた方が理想的でしょう。 機器としてPHS使うのに通常のアクセスポイント番号を指定すればつながりません。 また、携帯電話に関しても専用APが増えつつある現状を見れば、電話番号--接続機器の方が実用的なはずです。

 電池の消耗の早さにも困ります。(持続時間は体感的にMI-610の半分ぐらい)

 というように、個々の機能を見ればそれなりに「良くできている」と思っていても使い込んで行くうちに「なぜこれができない!!」「なんでここがこうなる?」「何考えてこの仕様にした!」というストレスに繋がる部分が増えてきます。

 同じ情報を見ているはずなのに機能によって操作性が変わる使い勝手の悪さは使えばわかると思うのですが...

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◆担当部門別では自己満足なのか?

 ザウルスの開発体制がどうなっているかは私も正確には掴んでいないのですが、「企画」「本体ハード」「デジカメ」「OS」「アプリケーションソフト」「デザイン」のように分業しているのでしょう。

 ハードを作った人から見れば機能的には良くできたと思われていることでしょうし、デジカメの人も同様でしょう。 OSに関してはMOREソフト開発面から見れば疑問の残る部分が多いのですが、独自OSとしてはがんばっていると自負されていることでしょう。 アプリケーション部分は多分さらに細分化されていて個々の機能と先進性の部分は「ここまでできたぞ」という声が聞こえてきそうです。 評判の悪いデザインに関しても「これが新世代のコンセプト」と自信を持たれてあのようにしたものだと思います。

 これ以外にもスペースタウンが絡み、クイックパス構想や番組表構想は先進的だと思われていることでしょう。

 各部門の担当者からすれば「自分のところの機能は良くできている、問題なのは他の機能だ」とでも思っているのでしょう。

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◆そしてアイクルーズは山に登った

 現状のアイクルーズを使っていて思い浮かんだのが「船頭多くして 船、山を登る」という諺です。

 諺の意味としては船に船頭が何人も乗っているとあっちだ、こっちだと議論しているうちにいつの間にか山に登ってしまった(方向違いの方に向かってしまった)ということになります。

 ザウルスという冠の元、本来のザウルス部門だけでなくスペースタウンという新たな部門のために機能を用意しなくてはならず、それぞれの部門責任者(船頭)がそれぞれの都合で機能を組み込んでいった結果、ユーザーからしてみれば使い勝手の悪い矛盾だらけの「ザウルス」を使わされることとなり、希望という名の
 未来が見えなくなり、アイクルーズ山のなかで彷徨っています。

 (注:この部分に関してシャープスペースタウン担当者から事実とは違うというクレームが付きましたので、とりあえずお詫びしておきますm(_ _)m)

 ザウルスの方向性が定まらないと、現在のPIシリーズやカラーポケットまでのユーザーの買い換えもままならないでしょう。

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◆わがままな責任者よ出てこい

 アイクルーズを眺めると、それぞれの部門は「自分のところは頑張って良いものを作った」と主張(アリバイづくりかな?)しているように感じるのですが、それをトータルでまとめ上げる部分に努力不足というか、迫力不足を感じます。

 各機能の連携性に矛盾が出てもそれを押さえつけられないというか、言いなりになってしまい、結局中途半端な状態で出さざるを得ない(得なかった)のが現在のアイクルーズの悲劇なのでは?

 「俺がザウルスのルールだ」と言うようなわがままな責任者がいて、「こんな機能にしやがって、顔洗って出直してこい」とか「ユーザーの意見を聞いてこい」「実際に使って反省しろ」「クイックパスの仕様を見直せ」「スペースタウンの言いなりにはならん! 」と言いたい放題でまとめ上げてくれたらな... と思いま
 す。(まあ、デザインは「困ったな〜」といいつつ逆らえないのかも(^^;)

 また、ユーザーに対しても「これでどうだ! 」「使いこなして見ろ」とか「ここは譲れん」という主張とか「今はこうだけど、絶対にこうする」というメッセージ(約束)とともに、ユーザーを未来に導いて欲しいものです。

 そうやって魂が込められた製品とユーザーの魂が共鳴することでヒット商品が生まれると思ってます。

 まあ、私は利害関係とか人間関係が無いから気楽にこんなこと書きますが、多分大企業内でこういうこと言いたい放題するのは夢なんだろうね〜(^^;

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◆ザウルスという名前の重さ

 アイクルーズが「ザウルス」という冠を持たなければ誰も文句は言わないでしょう(^^)/ コミュニケーションパルが良い例です。 これが「ザウルス・コミュニケーション」なんてネーミングだったら「これはザウルスじゃない」とか言ってWeb で叩いていたでしょう。

 シャープさんにとって「ザウルス」はあらゆる製品群の中で最も認知の高いブランドネームではないでしょうか? その「ザウルス」というネーミングを奪い合ってダメにしているのが現時点のアイクルーズなのでは?

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◆それでも夢を託しています > シャープさんの皆さんへ

 アイクルーズに関してはかなりプログラマブルな仕様となっており、機能追加がしやすくなっているように思われます。

 アイクルーズを評価するうえでの一つの山場が5月18日から始まるビジネスショウなのですが、果たしてシャープさんは既存アイクルーズユーザーだけでなく、ザウルスユーザーが希望を託せるようなコンテンツや機能拡張を我々の前に提示してくれるのでしょうか?