■人柱は続くよどこまでも(1999/07/07)

 アイクルーズは刻々とアップデートや追加MOREソフトが登場するため、このページに書いた内容も適宜見直さないと「まるとの書いていることは的外れ」と言われかねません。

 でも、オリジナルを書き換えるとあとから歴史を振り返る時の資料が無くなるので順次追記することにします。

 見解的にはトップページ通りなのですが、この部分を書いている時点では、度重なるアップデートと追加MOREソフトにより若干の薄日がさしすつつあるものの、最終的には中途半端な状況で終わる機種だと思っています。

 ただし、アイクルーズが与えた衝撃はユーザーに向けてだけでなくシャープさん自身にも向かって行ったので、このような中途半端な「ザウルス」は二度と出せないでしょう。

 その意味ではアイクルーズを買い、人柱として頑張った甲斐があるというものです(^^)/


■人柱の行く末

 買って使ってみればもう少しマシな評価ができるのかと思いましたが、使えば使うほど「未完成」な部分を感じます。

 高価な割に華奢な筐体はすぐに傷が入るし、クレードルの設計は配慮不足、デジカメを装着するとACアダプタ刺せないし、蓋がないからケース必須だしそのケースはベルトに装着できるわけじゃないと使い勝手面が悪すぎます。

 一方のソフト面はダイレクトキーがないのでPIMの使い勝手は悪いしデジカメの撮影も必ずワンステップ余分な操作を強いられます。

 メールやインターネットアクセスも同様の操作性です。 インターネット機能を重視するならワンタッチメールキーとか、ワンタッチインターネットキーを付けて見ろ!と言いたい。

 旧機種からのスムーズな移行ができないというのも大きなマイナスポイントです。

 なんでこんなものに「ザウルス」という冠を付けちゃんだろう、シャープさんは。


 現状のアイクルーズを買って満足している人には申しわけ無いが、アイクルーズユーザーは人柱的状態におかれているといっても過言ではありません。

 アイクルーズユーザーは「インターネット録画機能」や「クイックパス」がどれぐらい使われるかをチェックするための恰好のモルモットと言えるでしょう。

 私がかつて「カラーポケット」は新世代のザウルスの初号機だからバグ出しまくってコケルのでは? と予測しましたが、カラポケはそれでもまだザウルス的要素を残していたようです。

 アイクルーズこそ「新世代初号機」として歴史に悪名を残すのでは? たしかにカラザウほど悲惨な状況にはならないでしょうが、買ってすぐに満足に利用できない「ザウルス」というのはタダの電子玩具でしかありません。

 これがPalmPilot系のように「育てる事のできるPDA」であれば楽しみ甲斐もあるのですが、長らくユーザーにMOREソフト作りをさせなかったツケが今更のようにザウルスの不自由さを醸し出しています。

 ユーザーが必要とする機能をタイムリーに出せないからいつまで立っても「使い物にならない」状態が続く事になります。

 好きでザウルス買ったとは言え、やっぱり人柱なんだな(^^;


■私がアイクルーズを買ったわけ

 私の場合アイクルーズを購入した動機は「満足なデジカメ」の入手です。 パワザウのデジカメCE-AG03は展示会等では全く役に立たない出来で、2年近く「もっとマシなデジカメを!」と言い続けてやっと登場したCE-AG05はまずまずの出来で満足です。

 ザウルスにこだわったのは「機動取材システム」の完成を目指すためであり、どこからでもホームページ更新ができる環境を持ちたかったという野望があります。

 その意味ではアイクルーズのMYコンテンツの電子アルバムデータをHTML変換すればHPにできるわけであり、理想に近い環境が得られそうです。

 まあ、ノートPCでFrontPage98あたりを動かした方が速報的にも充実できるのですが(^^; このあたりは意地を通してみようかと思ってます。

 これ以外にPDA情報局やざうまがFLASHのネタ的に使えるから(^^?買ったとも言えます。 読者の皆さんが買わなくても、まるとの情報さえ見ておけば買った気になれるという物を目指します(^^)/


■アイクルーズって何なのさ?

 アイクルーズは衝動的に買うには高価すぎるため、何か明確な目的が無いと買えないでしょう。 ザウルスの上級機種と考えると、とてもじゃ無いけど満足できませんし、買うべきではありません。

 MI-610からの乗り換えを考えるとレポート、インクワープロ、表計算は削られているし、10円メールも現時点では対応が未定のようだし、フラッシュメモリカードを経由したデータ移行もできません。

 なにより使いこなしているユーザーが多用している情報ファイルの分類をいちからやり直さなければならない不便さは実際に移行を行ってみれば良くわかります。

 また、アイクルーズの根本となる「MYコンテンツ」は自分でオリジナルフォームが定義できないなど未完成品のようなもので、ハッキリ言って使いものになりません。 唯一使えるのはデジカメの画像に対応した電子アルバムぐらいです。

 こんな中途半端な出来でよく発売したものだと思います。 

 まあ、メインをインターネットとしてMYコンテンツなどは後回しだという思惑があるのでしょうが。


 アイクルーズはパワザウ後継機種だと思っていたのですが、全く違う路線の機種と考えるしかないようです。

 シャープさんがカラーポケット以降に発売した「ザウルス」はユーザーにとっては「ザウルスじゃない」と反発を受けるほどアドレス帳やスケジュールといったPIM機能が後ろに回されており、アイゲッティではインターネットが前面に出され、アイクルーズではさらにPIMは後ろに回されています。

 ユーザーが「ザウルス」という言葉で連想するのは使い易いアドレス帳スケジュール機能レポートに代表されるテキストの管理機能であり、インターネットに関しては補助的なものと思っているにも関わらず、それを前面に押し出し過ぎるためユーザーが迷うのです。

 ユーザーが「ザウルス」という言葉の定義を認識し直すか、シャープさんが新ブランドを確立しない限り、「ザウルス」らしさを求めるユーザーはどんどん離れていってしまうことでしょう。

 本来の「ザウルス」らしさに一番近いのがPalm Pilot(Work Pad)でしょう。 日々のスケジュールやアドレス帳の参照が快適にできるという点で昔のPIシリーズ的です。(ただし、PIM機能の完成度的にはザウルスの方がまだ上でしょう)

 アイクルーズはザウルスユーザーが買うべき「ザウルス」ではないと断言します。 


■アイクルーズは情報家電のプロトタイプか?

 アイクルーズのメニュー構成やダイレクトキーの省略状況などを見ていてふと思うのは、これがテレビに内蔵されていても違和感が無いということでしょう。

 カーソルボタンが付いたことでほとんどの操作はこれで可能となります。 これをテレビのリモコンに置き換えても通用しそうです。

 おまけに成り下がったPIM部分などは切り捨ててテレビに内蔵するか、WebTVのようなセットトップボックスに入れてインターネット機能とうたっても十分通用しそうです。

 シャープスペースタウン構想はザウルスやメビウス、テリオスといったパソコン系だけでなく、FAXなどにも対応するという奥深さを見せており、当然この後はワープロやテレビ、インターネット電話などにも対応すると思われます。

 そのアクセスソフトとしてアイクルーズに登載されたブラウザや録画機能などが利用されるのではないでしょうか?

 確かに「録画機能」は必要な情報を得るためには面白い機能ですが、まだ、こなれた機能とは言い難い操作面があります。

 それをアイクルーズに登載しユーザーに使わせてブラッシュアップするという方針をとっていても不思議ではありません。

 アイクルーズを使うユーザーは全くの初心者というよりは、ある程度ザウルスに慣れた中級者と思われ、ザウルス的中途半端な面に関しての免疫もあり「ああ、この程度ね」と我慢できるユーザー層です。

 この層に向けてプロトタイプ的なアイクルーズを提供し使い勝手などのフィードバックを得ながらブラウザ周りや録画機能を改善していくのではないかと邪推したくなります。


■AOLやポイントキャストへの対応

 以前AOL(アメリカンオンライン)はPDAを使ったアクセス構想を発表したことがあったはずです。

 その時はザウルスで対応するのかな〜?と冗談めかしていましたが、VGA画面を持ったアイクルーズの登場により現実味を帯びてきました。

 AOLの場合は専用のアクセスソフトを必要とするため、これまではパソコンでしか利用できなかったことと、グラフィックベースのため最低でもVGAクラスの画面がないと情報を表示しきれません。

 ユーザー層と需要の伸びにもよりますが、日本国内では高々20万にしかいないユーザーも世界レベルで見れば1200万人ほどいると言われ、PDAでアクセスする需要は確実にあることでしょう。

 アイクルーズの市場は日本国内だけでなくワールドワイドになると思われるため、AOLブラウザの登載はキラーアプリとしての意味があると思われます。


 同様にポイントキャストのブラウザとしても利用できそうです。

 プッシュ型コンテンツは最近流行りませんが、PDAの場合はポータルサイトにアクセスして見るというよりはまとめてダウンロードしておいて後からゆっくり見るというスタイルの方が現実的です。

 この意味でポイントキャストのようにまとまったデータを一括で受信できるという配信サービスの利用は理にかなったものと言えます。

 ポイントキャストブラウザの利用もVGAが最低線のため、アイクルーズでやっとスタートラインに立ったとも言えます。


 ただし、AOLもポイントキャストもシャープさんが力を入れているスペースタウンと利害関係にありシャープさん自身がAOLブラウザやポイントキャストブラウザを作るとは思えません(^^?


■既定路線

 これは既に既定路線で新鮮みはありませんが、シャープさんはIBMとの間で「パーベイシブ・コンピューティング」分野で協業すると発表しています。

 既に9月にはJAVAやJini登載のザウルスが発売されるとも予告されており、そのプロトタイプとも言える存在がアイクルーズなのでしょう。

 パーベイシブ・コンピューティングとは「境界を認識せずに利用できるネットワーク環境の実現」を目指し推進されているもので、フルに利用するためのアクセス端末としてVGAクラスの画面が最低線となりそうです。


■立派なハードに魂はあるのか?

 ハードは確かに凄いのでしょうが、PDAは中身が勝負。

 仮にシャープさんはPDAじゃなくてインターネット端末としてアイクルーズを世に問うたならその部分だけでも完成度あげれば良いのに。

 メール送受信のボタン選択もスクロールボタンが効かないし、使っているとストレス溜まるよ。

 こういう宝の持ち腐れ的ソフトがアイクルーズの価値を下げまくっているんだな。

 ユーザーのMOREソフトでさえスクロールボタン対応を積極的に進めているのに本家がこれじゃね。